2014年12月14日日曜日

沖縄県知事選 翁長氏と政府の対応今後いかに


(論評対象 20141117日付朝刊~19日付朝刊)
横浜国大ジャーナリズムスタジオ1A班 岩下詩帆

沖縄県知事選が16日投開票され、前那覇市長の翁長雄志氏が現職の仲井真弘多氏ら3氏を破り、初当選を果たした。日米両政府が普天間飛行場の全面返還に合意して以降の5回の知事選で、辺野古移設に反対を掲げた候補者の勝利は今回が初めてであった。この結果を受け、大手3紙はともに米軍普天間飛行場から名護市辺野古への県内移設が最大の争点であったするものの、辺野古移設については異なる見解を示した。

朝日毎日はそれぞれ1117日付社説で「辺野古移設は白紙に戻せ」、「白紙に戻して再交渉を」と見出しをつけ、ともに一本社説で掲載した。双方は今回の知事選をはっきりとした民意のあらわれだとし、政府は移設推進を断念せざるを得ないとの見方をとった。翁長氏が「イデオロギーよりアイデンティティー」と唱え、保革を超え新たに「沖縄対本土」の対立構図掲げて勝利したことにも注目した。また米国内でも計画に異論があるとし、政府が辺野古移設を「唯一の解決策」とすることに疑問を示した。さらに朝日は公約違反をした地元政治家への拒否であったとし、毎日は政府の対応によっては本土と沖縄の溝がより深まることを懸念した。

一方読売は同日付社説で「辺野古移設を停滞させるな」と見出しを掲げ、朝日や読売とは異なる移設容認の立場をとった。翁長氏が具体的代替案を示さなかったことや法的瑕疵のない承認の取り消しは困難なことを指摘し、現実路線に立つべきだとも述べた。

県知事選翌日17日付朝刊の第一面でも各紙に違いがみられた。朝日毎日ではトップ記事として扱い天声人語や余禄も含め、ほぼ一面にわたり記載した。一方で読売は第一面に3段で掲載するのみであった。朝日と毎日は知事選の結果を受けたアメリカの反応を掲載した。朝日は17日付朝刊2面で「米、移設先行きに懸念」と題し翁長氏の言動を注視しているとのべた。毎日も17日付朝刊3面で「米は警戒感」とし、移設停滞を懸念していることを明らかにした。一方、朝日は17日付朝刊2面に、読売は17日付朝刊38面に有権者である沖縄県民の意見も記載した。地元沖縄県民の実際の思いが知ることができ、良かった。

朝日は17日付朝刊第一面に那覇総局長による記事を掲載した。選挙で敗れたのは確かに仲井真氏であるが、本当に敗れたのは今まで沖縄の民意を汲みとってこなかった政府や本土であるとした。朝日はさらに衆議院選挙の影響についての見方も示し、17日付3面で「地方の民意を掬い取ることに苦戦気味」だと踏み込んだ。

毎日は17日付朝刊3面の一面全てを使い、「クローズアップ」に4段にわたる辺野古移設の記事と解説コラム「なるほドリ」を掲載した。辺野古と普天間飛行場の位置を示した地図や出口調査の結果のグラフが掲載され、目を引いた。問題を噛み砕いて解説もしており、よく理解できた。また18日付朝刊3面では「目に見えぬ海溝」と見出しを付けた「火論」を掲載した。沖縄県知事の職に殉じた島田叡の話から沖縄県知事選について論じるという切り口が新鮮であり、興味深かった。

読売は7日付朝刊2面に掲載された「想定される翁長新知事の戦略と政府の対応」という図を記載し、今後の流れが分かりやすかった。

沖縄の基地問題は沖縄対本土だけの問題だけではなく日米間の、安全保障の点では国際間の問題にも及ぶ。その点で政府の方針を支持する読売側のスタンスも理解できる。しかし沖縄県民の民意を政府、本土がしっかりと汲み取ってこなかったことに対し、非難し辺野古移設に反対の立場を鮮明にした朝日や毎日を評価できる。

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