2014年12月11日木曜日

羽生選手衝突事故 安全を重視する機会に


                        (論評対象:2014119日付朝刊~19日付朝刊)

                  横浜国大ジャーナリズムスタジオB班 足立冬馬

 

2014118日に行われたフィギュアスケートグランプリシリーズ中国杯で、羽生結弦選手が演技直前の練習で中国人選手と衝突し負傷する事故が起こった。脳震とうの疑いもあった中、羽生選手は本人の意思により強行出場し、見事2位に輝いた。朝日、毎日、読売の大手3紙はいずれもスポーツ面のみでなく社会面にまでこの事故に関する記事を掲載しており、関心の高さがうかがえた。

毎日は12日付朝刊の社説で、事故が起こったにも関わらず演技を強行した羽生選手を脳震とうの恐れの面から心配しており、脳震とうの怖さを社会全体で共有すべきだとした。朝日も14日付朝刊の社説でこの事故について触れており、スポーツ選手が試合出場にこだわるのは当然であり、安全のためのルール作りを急ぐべきだ、と提言している。読売はこの事故に関して社説がなく、他の2社に比べて注目度に違いがみられた。

毎日の9日付朝刊25面では、必死の形相でジャンプをしている羽生選手のカラー写真が掲載されており、臨場感と必死感が伝わってきた。また、朝日の9日付朝刊の第2社会面と読売の同日付朝刊26面では衝突直後、流血し係員に支えられながらも一点を見つめている羽生選手の写真が掲載されており、痛々しさと同時に羽生選手の気迫が感じられた。このように、各紙印象的な写真を用いることでより効果的に読者の関心を引き付けていた。

毎日の9日付朝刊25面の「羽生 不屈の2位」や、朝日の同日付朝刊第2社会面の「流血の羽生 意地の舞」といった見出しからわかるように、各紙表現に違いはあるが、事故が起こった直後の報道はどれも羽生選手の執念の演技をたたえていた。しかし、朝日と毎日は社説に顕著に表れているように、脳震とうの可能性がぬぐえないまま演技を行った羽生選手への心配や、安全のためのルール制定の提言などに論調が変化していった。このように論点が移り変わっていくのは読んでいて興味深かった。一方読売は9日付朝刊第1社会面で羽生選手を称賛する記事を載せていただけで、脳震とうの危険性などに警鐘を鳴らしていなかったのは残念だった。

朝日は9日付朝刊24面で、過去にも同じような事故が数例起こっていることに言及、フィギュアスケートの演技直前の練習方法の改善を促した。

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