2014年12月2日火曜日

小渕、松島両大臣辞任 「政治とカネ」問題再び


(対象範囲1020夕刊~115朝刊)

執筆者:山本舜也(ジャーナリズムスタジオ1年、A)


 小渕優子経済産業相と松島みどり法相が20日、安倍首相に辞表を提出し、受理された。小渕氏には後援会が会員向けに開いた観劇会の収支が食い違っている問題が浮上。松島氏は選挙区内で「うちわ」を配ったことが野党の追及を受けていた。朝日、毎日、読売の大手3紙は20日夕刊、翌21日朝刊ともに1面トップ記事で大きく取り上げ、このニュースの重大さがうかがえる結果となった。 
 21日付朝刊では、朝日(14,社説,36,37)、毎日(13,社説,6,24,25)7面、読売(13,社説,4,7,1012,38,39)11面と大臣辞任関連の記事を載せ、大きく紙面を展開した。各紙の姿勢は社説に現れた。
  朝日、毎日は、見出しをそれぞれ「首相が招いた異常事態」「失態を謙虚に反省せよ」とし、2大臣に辛辣な意見を寄せつつも首相の任命責任を厳しく指摘した。朝日では、内閣改造を機に閣僚の問題行為が続出したことをその理由に挙げた。
 毎日では、それに加えてこのことが女性の社会進出の妨げになってはならないと釘を刺した。また「有権者に取り入ろうとする古い政治体制と決別を」と首相のみならす自民党へ与党としての責任を問いただした。朝日と内容は似ていたものの毎日は1本社説である分、読み応えがあり具体的なところが評価できる。
 一方読売では、「早急に政権の体制を立て直せ」という見出しと共に、小渕、松島両大臣への指摘を中心的に述べていた。首相に関しては、「任命責任は私にある」という本人の談話と、「閣僚起用に関する事前調査が甘かった」と苦言を呈するにとどまった。

 また、江渡防衛相、小渕氏に代わって新たに就任した宮沢経産相、御法川副財務省を始め与党から次から次へと問題が噴出し、各紙は両大臣の辞任だけでなく一連の「政治とカネ」問題を約2週間連続で紙面に掲載した。野党の与党批判の声も日に日に大きくなり、各紙は安倍政権への影響という点でより詳しく報じた。

 政権の支持率は政権運営にとって非常に重要なものである。朝日は27日付朝刊1面、読売は26日付1面と28日付4面で支持率や世論調査に関する記事を載せている。読売では前回調査から9ポイント下落し53%だったのに対し、朝日では3ポイント上昇し49%だったのが興味深い。ただ、両紙ともに政権への大きな打撃はないという見解は一致していた。また、どちらも図やグラフを使用しわかりやすく読者に説明しようとする工夫が見られた。特に読売の28日付4面の世論調査の表が掲載されている記事は、安倍政権の現在の課題に対しての評価が簡潔に、理解しやすく述べられていた。
  毎日は支持率に関しての記事がなく、また朝日、読売と比べると「政治とカネ」に関する記事数が減少したので物足りなく感じた。

 その後、野党からも枝野氏など野党からも政治とカネ問題が発覚し、泥沼化まで進んだ。その際には、毎日(28日付)、読売(30日付)が再び社説でこの問題を取り上げ、現在の政治資金の管理のあり方を指摘し、改善を提言した。朝日がなかったのは残念である。

 一方、安倍首相の「撃ち方やめ」報道の際には首相から朝日を名指しして「ねつ造だ」との発言があった。朝日は31日付の記事に「記事の『ねつ造』はありません」という東京本社報道局のコメントを掲載するという、強気の姿勢にでた。また、その記事内には枝野氏の「産経新聞、毎日新聞、日本経済新聞、共同通信、そして朝日新聞が報道している」という会見も共に載せている。実は読売も30日付夕刊3面の記事に首相が「撃ち方やめ」と言ったという記述がある。また毎日は112日付社説で「首相の『ねつ造』発言 冷静さを欠いている」と題し、朝日の「援護射撃」とも取れる主張を掲載した。このニュースは政治とカネ問題で冷静さを失っている安倍首相をよく表していた。
 特定秘密保護法など報道が逆風にさらされている中、新聞社はこのような姿勢を大切にしていってほしい。

 一連の報道を振り返り、今回の騒動によって報道の重要性がより感じられた。次々と問題が芋づる式に出てきて、政治資金の管理のずさんさを暴いたのは、新聞をはじめとする報道機関の功績が大きいのではないか。大手3紙は、それぞれ立場が異なり掲載量にばらつきはあったものの、比較的報道のバランスはとれていた。

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