2015年1月8日木曜日

衆院選関連社説の比較 投票を促す内容が目立つ


対象記事:11月27日朝刊~12月3日朝刊
筆者:横浜国立大学ジャーナリズムスタジオA班、1年 松本朱音

 衆議院の解散総選挙を12月14日に控え、各紙は連日重要な争点を取り上げている。その中で有権者に向けて投票へ行くように進める論調も目立ち始めた。

朝日は29日付分で、自民党がテレビ局に対して公平な報道を求める要望書を提出したことに関して、それを批判する内容の社説を出した。今後は、各党が局に対して要望書を出している状況を有権者に公表してはどうかと提案した。なお、この件について社説を出していたのは朝日だけである。30日付分には、「立憲主義には逆らえない」との見出しをつけた。内容は安倍政権が憲法解釈を閣議決定で済ませたこと、個人よりも国家に重きを置く条文に改めていることを批判するものであった。12月1日付社説では、国民の信が問われなかった、安保政策が今度の衆院選で有権者からの審判を受け得ることを強調した。2日付分では、選挙を放棄し、意思を示さなければ次の政権への「白紙委任」と受け止められかねないことを指摘。「どうせ何も変わらないという冷笑の先に確かな将来はない。」と有権者に投票へ行くことを促す内容だった。3日付分では、増税の先送りによる社会保障への影響を防ぐための政策を示すよう、自民、公明、民主のさらなる論戦を期待していた。概して、朝日は他の二紙に比べて安全保障問題に関した内容が目立った。また、憲法解釈を巡る安倍政権の動きは立憲主義に反しているという姿勢であった。

毎日は、28日付朝刊の社説で、「将来世代の衰弱を防げ」との見出しのもと、増税が不可避であることを自民党、公明党、民主党間で再確認すべきと述べた。29日付分では、来年2015年が戦後70年になることから、歴史認識と外交についての社説を載せた。その中で、「党派を超えて国際社会を納得させる合意を目指してほしい。」と注文した。12月1日付分では、政策を実現できずに批判を浴びることへの恐れから、各党の公約が曖昧になっていることを批判した。そのうえで不明確な点は選挙戦を通じて詰めていく必要があると指摘した。2日付分では、「国民が主導権を握ろう」との力強い見出しのもと、経済だけでなく安倍政権が総合的に問われるべきだと強調した。また、よい選択肢がないからと選挙権を放棄しては、政治の主導権を握れないと有権者に対して訴えかけた。3日付分では、社会保障や国債の返済の実現には経済成長が必要であるが、各党の公約はその点についての具体性がかけていることを指摘した。末尾には、各党に対して「選挙戦を通じて、選び甲斐のある選択肢を示してほしい」と注文をつけた。毎日は、公約の曖昧さを指摘しながら、投票へ行くことを促すなど、有権者の目線に立った内容がより強調されていて評価できた。

読売は、28日付分で日本の経済政策を「アベノミクス」に託すかどうかが最大の争点で
あると強調した。一方、日本経済が安定成長をするために必要なことを各党は具体的に示すべきであると注文した。29日付分には、「人口減止める活性化策を示せ」との見出しをつけた。地方創生を看板政策に掲げる安倍政権は各種交付金の新設などを公約に含めたが、その内容に具体性にかけると批判した。30日付分では、安保政策に関して、「行使容認の意義を堂々と語れ」との社説を載せた。その中で、憲法9条の解釈変更に問題はないと社の姿勢を表し、民主党がそれを「立憲主義に反する」と主張したことを、「独善的」だと批判した。この社の論調は、朝日のものと真逆であることがわかる。12月1日付分では、増税先送りに際して「財政再建への目配り」が必要であると指摘した。2日付分では、「誤りなき日本の未来定めたい」との題のもと、有権者に政党や候補者を見極める力が必要であることを強調した。3日付分では、「論戦の説得力を吟味したい」と、これまでの各党の主張を比較した。また、経済や安保政策に関する具体策の提示を求めた。社の論調としては、与党擁護、民主批判が目立った。

取り上げる内容や、論調に差はあるものの、三紙とも選挙が近づくにつれて有権者の立場に立った主張をしていた。今後も、有権者の判断材料となる論点の提示を期待する。

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