2014年11月11日火曜日

東海道新幹線開業50周年 世界に誇る新幹線の飛躍これからも

           (論評対象 2014年9月29日付朝刊~10月7日付朝刊)                      

                                             
 
                横浜国大ジャーナリズムスタジオA班 岩下詩帆 
                  

東京、名古屋、大阪を結ぶ東海道新幹線が10月1日、1964年の開業から50周年を迎えた。当時「夢の超特急」と呼ばれた新幹線は今までで延べ56億人もの乗客を運びその一方で半世紀にわたり乗客の死亡事故ゼロであるという偉業を達成した。今でもその記録を更新し続けている。 
朝日、毎日、読売各紙新幹線50年の社説を掲載した。三社ともに新幹線のスピード、安全性、運行管理の素晴らしさを上げ、さらなる高みを目指すよう求めていた。 
スピードは片道6時間から新幹線開業により4時間さらに現在では二時間半を切ったことが述べられていた。安全性の高さも指摘し、その支えは性能などのハード面だけではなく、保守点検などの地道な努力にもあるとした。これらのことに対し、毎日1日付の社説で「日本ブランドの象徴的存在になった」と述べ読売は5日付の社説「日本が世界に誇る貴重な財産」であると高く評価した 
超過密ダイヤでも遅延が平均1分以内という緻密さについて朝日と読売は「世界に類を見ないし、毎日は「世界が驚嘆」と述べ、世界レベルでも最高水準を保っていることを示した 
一方で朝日と読売は新幹線安全神話に陥らないようにと釘も刺した。特に朝日は喫緊の課題として施設の劣化指摘し、「今後も最新の知見に素早く対応し、『想定外』を埋めて言ってもらいたい」と要求した毎日も速度や路線の延伸といった従来の価値観に対して挑戦するだけでなく、人口減少や高齢化、外国人旅行者の増加など役割の変化を先取りしていくことを要求した。 
読売は他の二社とは異なり、安倍政権の成長戦略において新幹線の重要性の高さについて言及していた。新幹線は成長戦略の柱となるインフラ輸出の目玉となるため、官民挙げて海外に売り込む重要性を挙げた。安倍政権も視野に入れた見方をしているのが印象的だった 
朝日は9月29日付朝刊に歴代新幹線の紹介と新幹線関係者や芸能人のコメントを掲載した。見開きで図や写真を載せるなどの工夫が見られ、わかりやすかった。5日~7日にかけて「夢の超特急50年」(上・中・下)と題した連載では5日と7日に新幹線関係者や利用者のエピソードを多く掲載した。今でもさまざまな立場の人に広く親しまれていることがよく示されていた。一方で6日の朝刊では「210の命 死者ゼロの礎」と題し新幹線建設の際に工事で殉職者がでたことについても触れた。7日付の朝刊では新幹線開通により大阪の企業が流出し、新たなリニア中央新幹線開業においても再びストロー効果が起きる可能性を挙げていた。ストロー効果の問題は朝日でのみ述べられており、印象的だった。 
毎日は10月1日付朝刊の企画特集で新幹線の変遷を紹介した。速さ、安全性や快適さが世界に誇れるものだと述べ、一方で災害への備えも必要であると述べた。 
東海道新幹線の1日の平均輸送人員のグラフや東海道新幹線の路線図など他社にはない図やグラフがあり見ていて興味深かった。 
毎日も前月30日~2日にかけて「駆け抜けた半世紀」(上・中・下)と題した連載を行った。30日には「名もなき殉職者210人」と題し朝日と同様に新幹線建設が多くの命犠牲のもとに作られたことを挙げた。1日に国鉄の赤字経営、2日には新幹線の建設において沿線自治体との交渉の苦難を取り上げた。新幹線建設から今に至るまで道のりは容易くなかったことがはっきり示されていた 
読売は連載がなかったが10月1日の夕刊1面で東海道新幹線50周年の出発式の様子の写真で1964年のものと2014年のものを並べて掲載した。時代を感じさせる印象的な2枚であった 
各社とも新幹線は世界に誇るべきものだとし、スピード、安全性、運行管理の点から高く評価した。特に朝日と毎日は連載を企画し、今ではあまり知られていない殉職者についての記事も掲載してあるのが良かったと思うまた三社とも災害などに対する安全性の向上に努めることを求めていたが、読売はより具体的に問題を示したほうがわかりやすかった 

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