2014年11月5日水曜日

川内村の避難指示解除 政府の対応と地元住民とのズレ

         (論評対象 2014年9月30日付朝刊~10月5日付朝刊) 
        

                横浜国大ジャーナリズムスタジオA班 岩下詩帆 
 
 
東京電力福島第一原発の事故を受け、その20キロ圏内にある福島県川内村東部に出されていた避難指示が10月1日をもって解除された。解除は今年4月の田村市都路地区に次いで2例目となる。 
 
この政府の避難指示解除に対し、毎日は消極的な見方の記事を、読売は積極的な見方を述べる社説を掲載した。朝日は積極的な意見の記事も載せるも消極的な意見が強かった。 
 
毎日は避難指示解除前日の9月30日付朝刊の第1社会面に「本当に生活ができるのか」と題した4段にわたる記事を載せた。川内村の避難民のインタビューを掲載し、帰村が容易に行えない現状を紹介した。また国が避難指示解除の1年後月10万の精神的賠償を打ち切ることに対し、「川内村は教育も医療も沿岸部の町に頼っていた。沿岸部が復興していないのに既存を促しても本当に生活できるのか」という郡山市の仮設で村民の相談に応じるNPOの代表者の意見を載せ政府の対応に疑問視する見方をとった。 
 
朝日も同様に10月1日朝刊の第3社会面で「住民の多くは当面避難先にとどまりそうだ」と述べ、避難指示解除の効果の薄さを予想した。一方で地域復興のために花を特産にしようと取り組む夫婦や村が工業団地を造り、外から人を誘致する計画があることを取り上げ再生の道も探っていた。 
 
読売は他の二社とは異なり10月5日の社説で帰還者をしっかり支えよう」という見出しで復興の契機となることを期待した積極的な見方の意見を掲載した。「日用品を扱う商店や医療機関の整備も進んで」いると述べ、復興が着々と進んでいるような印象が受けらた。ただ、朝日や毎日と同様に避難指示解除の1年後に東電からの毎月の支払が打ち切られることが住民が解除に応じにくい要因だとは指摘し、政府に新たな援助措置を求めていた。 
 
これほど深刻な原発事故は今までに前例がなく、国民の健康に及ぶ問題でもあるので福島第一原発の事故における帰還問題は容易には解決できないことは確かである。政府の対応処置とその処置がどれほど当事者にマッチしているかが鍵である。その点で毎日は多くの避難民に焦点を当てていたのはよかったと思う。また朝日は避難指示解除について前向きな立場と後ろ向きな立場両者の意見を載せていたのもよかった読売は社説では川内村について詳しく述べられていたが、事実を記載した記事が他社に比べて少なかった。 

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