2014年11月11日火曜日

21世紀照らす青い光

(対象記事 10月8日朝刊~10月15日朝刊)

筆者:ジャーナリズムスタジオ1年A班、釜堀美里


青色発光ダイオード(LED)を開発した日本人研究者3名が今年のノーベル物理学賞に選ばれた。名城大の赤崎勇教授、名古屋大の天野浩教授、米カリフォルニア大学の中村修二教授である。青色LEDはかつて「20世紀中の実現は困難」と言われていたが、赤崎氏、天野氏の師弟が地道な研究で開発に成功し、中村氏の技術が実用化に結び付けた。開発から実用まで日本で一貫して成果を出せたことは大きい。

 まず初報が出た8日付朝刊の時点で、朝日・毎日は6ページ分であったのに対して読売は8ページにわたって取り上げた。その後に出た記事も量は読売が一番多く、読売のこのニュースに対する注目度がうかがえた。各社ともに青色LEDの発明が最高の形で認められたことを日本人として誇りに思う、といった姿勢の取り上げ方をした。

 また三社ともに受賞者たちに人間性に焦点を当てた記事を掲載した。まず朝日は8日付け朝刊で赤崎氏、天野氏師弟の対談を掲載した。読売は9日付朝刊で師弟対談の記事を、毎日は9日付朝刊に赤崎氏の単独インタビューを掲載した。朝日はいち早く師弟対談を掲載した点に綿密な事前準備がうかがえた。また朝日は学生時代のエピソードを取り上げるなど3者の原点を追求するような内容の記事が多かった。そして読売は8日付夕刊の一面に中村氏が以前起こした企業科学者の待遇についての訴訟に焦点を当て、中村氏が未だ日本の研究者への対応に怒りを感じていることを取り上げていた。中村氏の訴訟の件について掘り下げていたのは読売だけであり、他社には無い着眼点は評価できる。一方で毎日は開発と実用化までの詳細を他社より詳細に掲載してあった。

青色LEDが成果を出せたのは3名が愚直なまでに一つの道を追求し続けたからである。しかし近年の日本では目先の成果を追い求める風潮が強まり、企業研究者の貢献が軽視されがちである。社説では三社ともにこのような日本の研究環境についての危惧を示した。朝日は大学での研究資金配分に短期決戦の要素が色濃くなっていることを挙げて、ノーベル賞受賞を喜ぶだけなく施策を検討すべきだと主張した。同様に毎日も日本の近視的な成果主義を否定し、成果に結びつくかどうか分からない研究の芽を支えていく仕組みづくりが重要だと述べた。読売は少し視点を変えて日本の人材不足や競争力の低下、論文発表数の減少を取り上げ今回の受賞による日本の「もの作り」の再活性化に期待したいと結んだ。研究者の待遇改善問題を取り上げれば読者がより問題意識を持てるのではないかと思った。

 他に朝日は研究予算や博士課程への進学率などの数字データは豊富だった。読売は各国メディアが今回の受賞を称えているという内容を唯一掲載していた。また毎日はLED市場や株価のデータを載せており、経済面での影響を示していた点がよかった。


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