(論評の対象範囲10月14日付夕刊~10月22日朝刊)
筆者:ジャーナリズムスタジオB班1年松本朱音
これを受け朝日・毎日・読売各紙は14日付夕刊の1面でその決定を伝えた。朝日は、15日付朝刊5面で今回新たに示された法案の運用基準55項目をすべて載せた。これにはパブリックコメント(意見公募)が寄せられ、政府により運用基準の一部が修正されていたが、朝日はその変更に対して「あいまい」と述べていた。また特定秘密を検証する独立公文所管理監の「権限の弱さ」を挙げ不安要因について触れていた。その機関について懸念される課題点は15日付朝刊の3面全面に載り、社会面(38面)には法案に対する抗議活動の様子が取り上げられていた。一方で、15日付朝刊の3面には、安全保障上の問題から「特定秘密保護法案が必要になる」と述べる教授の話も掲載されており主張のバランスが取れていた。なお、朝日は他の二社とは対照的に法案についての社説を掲載しておらず、法案に対する最終的な立場はあいまいに感じられた。
毎日は、朝日と同様に15日付朝刊5面に運用基準55項目をすべて載せた。法案の廃止・撤廃の意見書を可決した市町村議会に関する記事を載せた。また、日本ペンクラブをはじめとする出版業界、報道関係者による法案の懸念要素、『知る権利』を守る姿勢を表したコメントを多数載せており、朝日と同じく抗議活動についても触れていた。
15日付朝刊の社説では、パブリックコメントを受けて一部修正された運用基準について、「微修正にとどめた運用基準は評価できない」と述べた。法案自体に対して、「民主主義の原則が十分尊重されないままの施行に改めて反対する」と強い意見を示した。今後現実に、施行されても「『知る権利』を託された報道機関の役割は変わらない」と社の姿勢を表した。
読売は関連記事の掲載が、政令の決定された14日夕刊と、翌日朝刊の2、3面のみで他の二社に比べて明らかに少なかった。社説では「国民の『知る権利』を守りつつ、秘密情報の漏洩防止と両立させることが肝要である。」と述べ、安全保障の必要性も述べていた。運用基準については「まだ不十分だ」としつつも、「建設的な提案を積極的に運用基準に反
映したことは妥当である」と評価しており、読売の決定容認の姿勢がうかがえた。政府の示した運用基準については読売のみが「かなり具体的な線引き」と評価していた。
特定秘密保護法案の施行決定に対して、各社の態度の違いは記事数、記事の内容、社説から伺えた。ただ、朝日に関しては社説がなく、社としての立場が明確にわからず残念であった。出版報道界において重大な節目になる今回の決定に際して、意見を表明すべきであったのではないかと感じる。
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